タトゥーや刺青を入れていると、日常生活の中でも不自由なことがあります。その中のひとつとして、よく知られているのが温泉やプールなどへの入場の拒否です。さて、このようなタトゥー、刺青を入れている人に対する入店や入場の制限は法律上可能なのでしょうか?
ここでは、法律上の問題についてご紹介します。
肌を見せる場所はNG? 入場制限を受けやすい場所とは?
旅館の温泉においては、昔から「刺青お断り」の表示を目にすることがよくありましたが、最近では、ファッションとしてタトゥーや刺青を入れる人が多くなった分、温泉以外でもこのような表示を掲げるお店や施設が増えています。
特に肌を露出するようなプールや、シャワーや入浴設備を備えているゴルフ場やスポーツジム、エステにおいて入場や入店を制限されることが多く、また、キャンプ場も利用できないことがあります。
もし、入場制限をしている施設に入ってしまうと、施設の管理者に退場を命じられることもあり、また、それに伴う施設利用料や入場料などの返金もされないことがあるので十分な注意が必要です。
タトゥーや刺青が入っている人を入店させたくない理由
タトゥーや刺青を入れているだけで、入場や入店を制限される大きな理由は、他の利用者への配慮です。日本国内においては、刺青といえば反社会的勢力の象徴的なイメージも強く、また描かれている絵や文字にも力の誇示が感じられることが多いことから、そのような刺青を目にしてしまった人たちが恐怖を感じてしまうのです。
最近では、ファッションの一部としてタトゥーや刺青を入れている人もいますが、タトゥーや刺青から受ける印象は人によって異なるために一律して制限しているところがほとんどです。
タトゥーや刺青で入店NG!? その法的根拠とは?
ではタトゥーや刺青を入れている人の入場や入店を制限することは法律上許されていることなのでしょうか。
入場や入店の制限は差別的な印象を受けるかもしれませんが、民間の施設においては「契約自由の原則」によって可能です。
契約自由の原則とは?
民法の90条(公序良俗)と91条(任意規定と異なる意思表示)によって導き出された原則で次の4つがあります。
・契約締結の自由(契約を結ぶかどうかを決める自由)
・相手方選択の自由(契約の相手方を決める自由)
・契約内容の自由(契約の内容を決める自由)
・方式の自由(契約内容を書面化するか否かの自由)
このように、店側がどのようなお客様と契約するかを自由に決められるということです。
建造物侵入!? 制限を無視した際のペナルティーとは?
タトゥーや刺青をしていても、入場や入店時にこれらを隠すことで利用できる施設もあるので、まずは施設の管理者に確認するようにしましょう。
また、もし、入場や入店の制限を受けているにも関わらず立ち入った場合や、施設の管理者の指示に従わなかった場合には、建造物侵入罪(刑法第130条)の容疑で逮捕され、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金を科せられる可能性もあるので十分な注意が必要です。
タトゥーや刺青を入れている人に対して、温泉などの施設利用を禁じる法律があるわけではありませんが、ほかの利用者の気持ちを考えて、ルールを守ることは大切です。「刺青お断り」の店に入れないなど、タトゥーや刺青を入れていることで日常生活に支障をきたすことがあるのであれば、除去することも一度検討してみてはどうでしょうか。